砂漠に木を植える 2

 

 砂漠化の進行。平成9年のある資料によると、1年間に日本の本州に相当する面積の森林が地上から消滅し、中国地方と四国を合わせた面積に相当する土地が年々砂漠と化しているといいます。森林の伐採や家畜の放牧、焼き畑や開墾などの人為的な要因に干ばつなどの自然的要因が追い打ちを掛け、砂漠化が進行しているのです。

 恩格貝(オンカクバイ)と言うこの地の地名は蒙古語で平安・吉祥を意味し、その名の通り昔は家畜が群をなす緑あふれる豊かな土地だったといいます。しかし、この地も長年の開墾、放牧、そして戦争によって平安・吉祥は破壊され、裸の大地と化してしまいました。 その恩格貝から砂漠を押し戻し緑をよみがえらせようと、10年前から砂漠緑化活動が始まったのです。

 砂漠の緑化といっても、すべての砂漠が緑化可能というわけではありません。その点恩格貝はかつて緑豊かな土地であったため、地下水が豊富で緑化に適しているのです。万里の長城の建設にも匹敵すると言われるこの砂漠緑化事業を始めたのは、なんと日本人でした。遠山正瑛氏、鳥取大学名誉教授、95歳。白寿を間近にして、氏は今なお恩格貝の現地で砂漠緑化活動の陣頭指揮に当たっています。別れ際に私たち協力隊員と握手をした氏の手は、小柄な体に反して大きくごつごつしていて、実践者の確信に満ちた力強いものでした。

 91年に氏により設立された日本砂漠緑化実践協会が、様々な団体や個人の協力を得てこの10年間に植林した木は約341万本にのぼり、そのうち約290万本の木が活着(根付くこと)し、砂漠に緑をよみがえらせました。その砂漠の中によみがえった森は、今では人工衛星からも確認できるほどになったといいます。年間降雨量も少しずつ増え、生態系も徐々に回復しつつあります。

 森の木の根は砂の移動を止め、木の葉は日陰をつくって地面を冷やし、苛烈な砂漠の環境を和らげて様々な命を呼び戻すのです。その様々な命の棲家となる森をさらに大きくしたいと、私たちの協力隊も砂漠の植林活動に参加しました。

  砂漠緑化協力隊。国や企業や団体など様々なレベルの協力隊が日本砂漠緑化協会のクブチ砂漠緑化事業に協力をしています。今回私が参加したのは、私の母の所属する団体が希望者を募って編成している協力隊で、その23次目の隊でした。

 協力隊参加を強く希望していたのは母なのですが、高齢を理由に本人が参加を断念したため、代わりに私が参加することになったのです。今回の協力隊のメンバーは、最高齢77歳から大学生まで引率者を含めて34名で、男女比は約半々、中心は50歳〜60歳代の中高年パワーでした。(つづく)

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