砂漠に木を植える 1

 

砂漠に木を植えてきました。

 平成13年の8月の初旬、中国内蒙古自治区クブチ砂漠にある恩格貝(オンカクバイ)という所で、砂漠緑化活動の協力団体の一員として砂漠にポプラの苗木を植えてきました。

 クブチ砂漠はモンゴルのすぐ南に位置し、その中央にある恩格貝は、日本の青森とほぼ同じ緯度にあります。成田から直行便の飛行機で北京まで3時間。北京から包頭(パオトウ)のひとつ手前の包頭東駅まで寝台列車で約14時間。包頭から恩格貝まで旅行社のバスで約2時間。バスは途中黄河を渡りますが、橋が浮き橋のためバスを軽くしなければならず、人はバスを降りて歩いて渡りその後を空のバスが渡ります。北京に一泊したので、寝台列車での車中泊を入れて2泊3日で内蒙古のクブチ砂漠にたどり着きました。

風紋の刻まれた見渡す限りの砂の平原が果てしなく続き、はるか彼方にかすかに丸みを帯びた地平線が陽炎に揺れている。あるいは、古い風紋をかき消し、新しい風紋を刻みながら砂嵐が吹き荒れ、巻き上げられた砂塵のほかは何も見えない。これが私の抱いていた砂漠のイメージでした。

しかし、まだ植林されたばかりの恩格貝の若いポプラの林を呑み込むように迫る砂丘に登った私の目の前に広がったのは、まるで月面のような世界でした。ごつごとした砂のうねり。荒々しい波のような砂丘が幾重にも連なった広大な砂の海。果てしなく続く砂の波と空とかすかな雲、そして灼熱の太陽。夏の気温は40℃以上、砂の地表温度は70℃以上で時には90℃近くにまで達することもあるといいます。冬の気温は−20℃にまで冷え込むことがあり、地面は凍りつくそうです。

 私の前には、灼熱の死の世界、広漠とした熱砂地獄が、はるかな地平線を呑み尽くして果てしなく続いています。しかし私の背後には、まばらな雑草とこの10年間の植林活動でできたポプラの大小の森が点在する平原が広がっています。果てはあるのです。砂漠の向こうの果ては望むべくもありませんが、私は確かに砂漠のこちら側の果てに立っているのです。ところが、その砂漠の果てが、今猛烈なスピードで拡大し続けているのです。
(つづく)

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